歩くひと_ヒロクレ日記

旅した土地の思いで 子どもと暮らす 日々雑記

嘘つきアーニャの真っ赤な真実

米原万理"嘘つきアーニャの真っ赤な真実”読了。久々、読んでいるうちに鳥肌が立ってきて止まらなくなった。

内容は、共産党員の父を持ち、1960年代の数年をチェコの在プラハ・ソビエト学校で過ごした少女マリが、30年以上経て、1990年代の中・東欧の政情不安、ソ連崩壊(と冷戦終結)、ポスト冷戦時代の民族紛争等を契機に、音信の途絶えていたかつての旧友3人の消息を訪ねたもの。

思想背景に社会主義を持ち、東欧での生活体験がある上、(ロシア語通訳という)職業上、東・西両方の情報に触れてきた著者の視点は至極冷静。旧友3人の消息を問うという個人的な体裁をとりながら、(共産主義の)非合法時代(マリの両親の時代)から、1990年代までの中・東欧の社会情勢をも細やかに分析しつつ、視線はあくまで、社会情勢に否応なく巻き込まれた旧友と、旧友に連なる人々に向けられている。

解説は斎藤美奈子(以下一部抜粋)。

"民族紛争の後に再び帝国主義戦争の時代がやってきそうな21世紀。私たちに求められているのもまた「具体的に生きるだれか」に対する想像力です。もちろんそれがナショナリズムにたてこもる方向ではなく、互いの多様な文化を認め合う方向でなければならないことは、いうまでもありません。”

悲しい哉、受験のための歴史科目選択だった私は、世界史を切り捨ててきてしまったことをものすごく後悔している。