祖母の思いで(改
祖父母と買い物にでかけた帰りのこと。
田舎の駅舎の改札をくぐった辺りで、汽車が入ってきたので飛び乗った。
足が少々不自由な祖父を座席にかけさせ、荷物を網棚に置いてほっと一息。
と、祖母がいない。
振り返ると、閉まりかけているドアの向こうに、佇む祖母の姿が見える。
“ばあちゃん、何やってるの、乗らなきゃ”と呼ぶも、にこやかに佇んでいる。
あーっ!もう!!と思いつつ、“ここで待ってて、引き返すから”
大声と身振りで、既にぴったり閉じているドア越しに伝えていると、
“あいつなら、放っておけ”
おもむろに祖父が口を開いた。
“じいちゃん…”
“えぇがて、放っておけ”
開いた口をふさぐことも忘れて祖父を見つめると、
“えぇがて…”と呟いたきり、半ば向こうをむいて、それきり岩のように黙ってしまった。
祖母が泉門に入ったのは、それから半年ばかり経った、残暑の厳しい昼下がりだった。
自身、予感があったのだろうか、亡くなる2日前には髪を染めに、病院内の美容院へ行ったという。
真っ白い菊と、蒼白な祖母の顔の間に、黒々と艶やかな髪が覗いていたのを、妙に鮮明に覚えている。
思い返してみると、遠方の祖父母とは、一緒に連れ立って出かけたことなどなかったのだ。
寒村のうまれの祖母は、自身の身の回りには無頓着で、真っ白の頭にネットをかぶり、いつも畑作りに精を出す人であった。
*彼につまらないよ、とクレームを頂いたので推敲してみました。
【元の文】
祖父母と買い物にでかけた帰りのこと。
田舎の駅舎の改札をくぐった辺りで、汽車が入ってきたので飛び乗った。
足が少々不自由な祖父を座席にかけさせ、荷物を網棚に置いてほっと一息。
と、祖母がいない。
振り返ると、閉まりかけているドアの向こうに、佇む祖母の姿が見える。
“ばあちゃん、何やってるの、乗らなきゃ”と呼ぶも、にこやかに佇んでいる。
あーっ!もう!!と思いつつ、“ここで待ってて、引き返すから”
大声と身振りで、既にぴったり閉じているドア越しに伝えていると、
“あいつなら、放っておけ”
おもむろに祖父が口を開いた。
“じいちゃん…”
“えぇがて、放っておけ”
開いた口をふさぐことも忘れて祖父を見つめると、
“えぇがて…”と呟いたきり、半ば向こうをむいて、それきり岩のように黙ってしまった。
午睡の夢は後味が悪いもので、変に乾いた喉を潤そうと居間に行くと、少々血の気がひいた顔をした母が、たった今、あるべき位置に戻ったばかりという風情の受話器に手を添えながら、祖母が今しがた泉門に入ったと告げた。