歩くひと_ヒロクレ日記

旅した土地の思いで 子どもと暮らす 日々雑記

こんな夜更けにバナナかよ

渡辺 一史“こんな夜更けにバナナかよー筋ジス・鹿野靖明とボランティアたちー”(→amazon)読了。

本書は、筋ジスを患い、人工呼吸器を装着、自力で体を動かすことがほとんど不可能ながら、(実家・施設を離れて)自立生活を営む鹿野氏と、彼の生活を24時間支える介助ボランティアとの交流を描くノンフィクション。

読後感、とにかく面白い(し、“寅さん”映画を見たときと同種のストレスがちょっとだけ溜まる)。

まず、鹿野氏の強烈な自我。

24時間要介助者の鹿野氏にとって、要求すること=生きることなのだが、とにかく病院だろうと家だろうとあたり構わず要求し、自分を主張し、ボランティアに八つ当たりしてわめき散らす。自分が一番というのは誰しも持っている感情だが、その表出具合は、まるで2・3歳児。

酒、タバコをのみ、しょっちゅうボランティアに恋をし、アタックして破れたり、周囲を巻き込んでドロドロしたり…。でもめげずに、その顛末の一部始終を身近なボランティアに話しまくる…。

こんな人、身近にいたら絶対嫌だな(でも、今身近に自我の固まりがいるので、本書を夢中で一気読みし、ちょっとだけストレスを溜めたのです)。

次に、ボランティアの個性。

24時間×365日×1日3交代のボランティア枠をうめる多種多様なボランティアは、年齢、性別、生活環境から鹿野氏との付き合い方も、ボランティアに対する姿勢も様々。その各個性もさることながら、

24時間・365日×3人=のべ1095人との関わりを続ける途方の無さよ…。

そして、筆者の困惑。

amazonのレビューにも“ある意味、未整理な本”というのがあったが、筆者の困惑や揺らぎが(時に饒舌になりつつも)そのまま出ていて興味深い。

ライター職ということで編集者からテーマを与えられ、取材をしていると“ボクの自伝はどうですか?”やら“表紙がどうの…”と口を挟まれ、取材したボランティアからは時に挑発的な返答を受ける。自分もボランティアとして関わるうちに思いが変わることもあり…。筆者も辛かったんでしょうな、“揺れ”が厚みを加えて魅力的な本となっていると思う。

もちろん、障害者の、医療福祉制度問題・ノーマライゼーション・自立問題・介助介護問題やそれに付随する多様な問題を内包し、参考文献も多い。